訪問看護の需要が増加
需要増加に伴う人材確保の重要性
厚生労働省の動向調査によると、2025年に在宅医療を必要とする患者さんは30万人前後になると推計されており、要介護認定者の数はここ16年間で2.85倍と加速度的に増えています。全国訪問看護協会が行った調査では、訪問看護ステーションには看護師、准看護師、保健師が2.5人(常勤換算)必要としています。訪問看護ステーションは需要の増加に伴って数が増えていますが、1ステーションあたりの看護職員数は横ばいの状態が続いています。需要の増加は確実視されているので、このままでは人手不足に陥ります。あらゆる医療機関において、看護師の人材確保に向けた取り組みが行われています。
在宅医療においては、日常的な療養支援だけではなく、緊急時の対応や退院支援、看取りなどを行います。患者さんに安心して治療を受けてもらえる体制を整える一方で、緊急時に幅広く対応できる人材の確保が必要なのです。特に、24時間体制で運営している現場は人材確保に苦労しているようです。
訪問看護師に興味がある・ない
訪問看護師として働きたいと考えている看護師はどの程度いるのでしょうか。転職支援サービス会社が行った調査を例に紹介します。現在病院勤務の看護師に向けた「訪問看護に興味があるか否か」という問いに対し、「ある」と答えたのは11%でした。「少し興味がある」を含めると、全体の3割ほどは訪問看護に興味があることが分かりました。しかし、クリニック勤務の看護師に同様の調査を行ったところ、8割以上が「興味がない」と答えたそうです。「興味がある」と答えたのは4%しかいませんでした。どうやら、訪問看護師として働くにあたって様々な不安があることがこの結果につながったようです。
訪問看護に対して看護師が抱える不安として多いのが、「スキルや経験の不足」「仕事内容と待遇」などです。また、「患者さんやそのご家族との関係構築」「関連スタッフとの連携」なども不安材料となっているようです。
看護師不足解消に向けた取り組み
日本看護協会は看護師不足を解消するための施策として、「新人看護師の育成に力を注ぐ」「医療・福祉など関係機関の連携強化」を掲げています。臨床研修制度の中で訪問看護の研修や実習を取り入れ、新人看護師が訪問看護に興味を持ってもらえるように働きかけています。また、看護師自身のワークライフバランスを重視した働き方を実現するための、多様な勤務体制の実現を可能とする取り組みにも注目が集まっています。今後も、訪問看護師確保に向けた取り組みが行われていくでしょう。