2025年問題が及ぼす影響
2025年問題とは
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで起こり得る様々な問題を総称して「2025年問題」と呼びます。団塊の世代は800万人ほどで、現在の後期高齢者1,500万人と合わせて2,300万人が後期高齢者になります。国民の4人に1人が後期高齢者になる計算です。
医療業界にとって大きな問題
2025年問題の影響を最も受けるのが医療業界です。現状でも医療機関における過酷な労働環境が課題となっていますが、今後はさらに過酷になる可能性があります。後期高齢者が急激に増加する一方で、若い世代の人口や労働力は減少しているため、需要と供給のバランスを失う恐れがあります。病院数が減少し、医師や看護師などの医療従事者が不足します。医療や介護の需要は上がり続けるでしょう。身体機能が低下した高齢者や、認知症患者の数が増えていきます。これに対応するためには、介護と医療の強固な連携と、サービスをスムーズに提供するための体制作りが求められます。それと併せて、人材の確保や定着を推進するための労働環境の改善と待遇の見直しが必要です。
加えて、社会保障や年金の問題について考えなければなりません。後期高齢者は体力が衰えており慢性疾患を持つ方も多いため、医療費が増加します。高齢者を支える労働力が確保できなければ、社会保障の負担は増加するでしょう。年金支給額の減少や支給開始年齢の引き上げ、あるいは年金制度そのものの崩壊も考えられます。需要が高まり売り手市場となる一方で、供給側の機能低下が問題視されます。このように、2025年問題は医療業界における大きな課題として立ちはだかっているのです。
看護師に関わる制度改正
2025年問題に向けた制度改正として、通信制2年課程の教育体制改正があります。これまでは、准看護師から看護師へ移行するために、10年以上の経験がある准看護師に向けた通信課程が設けられていました。しかし、開始当初に比べて志願者は減少傾向にあります。そこで、地域包括ケアの推進や看護師の増加を図るために、2015年に国は「地域医療体制の充実に向けた看護師養成のため、通信制看護師学校養成所の入学基準について、准看護師としての業務経験年数を現行の10年から大幅に短縮することについて全国的な措置として検討し、本年度中に結論を得て速やかに措置する」と決定しました。これにより、入学条件が10年以上から「7年以上」に短縮され、専任教員数が7人以上から「10人以上」に増えました。また、指導ガイドラインも一部改正され、准看護師から看護師への移行を促している状況です。